なぜ海大学卒の僕が日系大手に就職するのか。
日本人留学生が皆、一度は頭を悩ますであろう就活。
卒業後は留学先の国に残るのか、日本に帰るのか。
そもそもその国に残れるのか、残っても自分が就きたい仕事につけるのか。
日本に帰るなら日系か外資か、どの業界か、就活はいつどこでするのか。
僕自身も自分自身と向き合って、たくさん考え、迷い、初めての就職活動に海外大生枠で臨みました。そして内々定を頂いた日系不動産デベロッパーで2021年から働くことに決めました。
海外留学生の就活はポピュラーになってきているものの、どうしても海外大生による海外大生用の就活体験記というのはまだまだ少ないように感じます。
今回、僕自身の経験をシェアすることで少しでも皆さんの助けになればと思い、この記事を書くことにしました。
これから就活をする海外大生の皆さんは是非ご一読下さい。
目次
Who am I?
改めましてこんにちは、初めまして。
バンクーバーにあるサイモンフレイザー大学四年生のKoheiです。
専攻はCommunicationで、純日本人。
高校三年時にアメリカに一年交換留学した後に、日本の高校を卒業。
同年秋に渡加し、正規留学を開始しました。
アメリカに行くまでは18年間ずっと日本に住んでいて、両親ともに日本人、英語も得意ではありませんでした。
そんな僕がなぜ留学を決意したのでしょうか?
留学のわけ
僕は日本の私立の中高一貫校に通っていました。
偏差値は全国トップクラスで先輩も同級生も超優秀、そんな中僕は少々日本の受験勉強に嫌気がさしていました。
小さい頃から塾に通い、ずっと周りは似たような境遇の生徒ばかり。
機械のように勉強をこなし、試験の点数が自分の運命を左右する。
エリート集団と言えば聞こえは良いが、受験界という狭い世界で生きることに違和感を感じていました。
先輩達も大半が東大、京大、医学部などに進学していましたが、優秀な彼らを見てもどうしても「こんな風になりたい。」とは思いませんでした。自分がなりたい大学生像は当時はっきりとはありませんでしたが、彼らは僕の憧れの対象ではありませんでした。
そんな中、受験へのモチベーションは上がらず成績も下がる一方。
この時が一番精神的に厳しかったです。
そんな時知ったのが留学フェローシップ という団体。
そこで出会った海外大に正規留学している日本人学生の先輩達とお会いして、圧倒されたのを今も覚えています。
勉強も課外活動も真剣に取り組み、世界中から集まる学生達と切磋琢磨している彼らには、同年代の日本の大学生とは比べ物にならない迫力がありました。
これこそが自分がなりたい大学生像だと確信した僕は、親と学校と相談して、高校三年時にアメリカに一年交換留学すること、在米中にカナダの大学への入学手続きを済ますことにしました。
大学に入ってからは自分が学びたいことを学び、思う存分課外活動、スポーツ、アルバイトに取り組んでいます。
かなり簡略化しましたが、こういった経緯で僕は海外に飛び出しました。
なぜ日本に帰るのか。
月日は流れ、僕も大学三年生を終えようとしていました。
そろそろ卒業後の進路を決めなければなりませんでした。
カナダでは四年制の大学を出た留学生は、卒業後に就労ビザを取ることが出来ます。
なのでカナダに残ることも少し考えましたが、やはり日本に帰ることにしました。
理由は二つありました。
自分の人材としての価値
一つ目は自分の人材としての価値を最大限に発揮できるのは日本だと考えたからです。
カナダに残った場合は、自分は就労ビザ持ちの日本語が話せる外国人。
日本語が話せることがプラスになることはほとんどないし、ビザも卒業後すぐ貰える訳ではない。
さらに現地就職となると、そこにずっと住んできた英語ネイティブの生徒達と戦わなければならない。そして留学生に限らず、初めにつける職はあまり待遇が良くないことがほとんど。
しかし日本に帰ると、自分は英語が話せる日本人です。
海外で高等教育を受けていて、英語が話せる日本人新卒学生というのは日本ではまだまだ貴重ですし、僕には18年間日本で生きてきた中で培った日本人としてのアイデンティティもあります。
そういう訳でカナダでの現地就職では狙えないレベルの会社も、日本で就職するなら射程圏内に入ってきます。それならばカナダで外国人としてキャリアをスタートさせるより、日本に帰って一流企業でしっかり働く経験をした方が良いと判断しました。
母国での新たな挑戦
二つ目は、そろそろ一回日本に帰ろうと思ったからです。
大学卒業時には、アメリカで一年、カナダで四年の計五年を海外で過ごしたことになります。海外に出たからこそ分かる日本の良いところも悪いところもあったし、それらを踏まえても一回自分の母国である日本に帰って新しいことに挑戦しようと思いました。
バンクーバーも居心地が良いのですが、良くも悪くも雰囲気がかなりのんびりしています。これ以上ここでダラダラするよりかは、日本の首都である東京という新しい環境で働く方が自分は成長できるなと感じたからです。
もう一つの理由は、母国でもう一度日本人らしさ、自分らしさ、という概念と向き合いたいと考えたからです。
日本人に限らずですが、海外生活が長い人はどこか中途半端な感じになってしまう感が否めません。母国のアイデンティティは捨てきれず、かといって現地のカルチャーには完璧には迎合しきれず。
その歪みが、自身のアイデンティティ、そして生き方の軸の揺らぎに繋がっているように感じる場合も多々あります。
僕も死ぬまで日本にずっといようと考えている訳ではないですが、ここいらで一旦帰国して力をつけて次のステップに備えようと思い、日本に帰ることにしました。
就活の軸
日本に帰ると決めたので、次は就活です。
しかし、いきなりよっしゃ就活や!と言っても、自分がどの業界のどの会社で何をしたいのかはさっぱり分かりませんでした。
そこでまずは自分の就活の軸を決めることにしました。
そして自身のミッションステイトメントを「繋がりで人を強く、幸せにする」というものに決めました。
僕はカナダにきた時は家族も友達もおらず、人生で初めて一人ぼっちになりました。
周りに日本人はほとんどいなかったし、他の留学生達は出身が同じ者同士で固まって彼らの母国語ばかりを話す。
言葉も違えば、文化も違う。そんな環境で0から人間関係を構築していく経験を通して、日本にいた時は煩わしいとさえ感じていた人と人との繋がりの大切さを再認識しました。その繋がりのおかげで大変なことも乗り越えてこられたし、人と人が助けあって生きていくことの大切さに気づきました。
これは受験という言わば蹴落とし合いの世界で、ずっと生きてきた僕に欠けていた意識でした。
そして「繋がりで人を強く、幸せにする」ことこそが自分が自身の人生においてしたいことだと考え、それを自身のミッションステイト、就活の軸としました。
業界選び
さて軸も決めたところで次は業界選びです。
父が昔、海外で不動産業をしていたこと、そして僕自身もバンクーバーで不動産仲介会社でアルバイトをしていたこともあり、第一希望は不動産業界と決めていました。
しかし、自分は社会人経験もないし、いきなり業界を一つに絞り切るのも良くないと考え、自分の軸に合いそうなところは業界をまたいで色々受けました。
また不動産を扱える可能性のある銀行や商社も受けました。
皆さんも是非色んな業界の説明会や選考会に足を運ぶことを強くお勧めします。
学生としての経験値やオンラインの情報のみで、意思決定をするのは危険です。
実際にその業界や企業の方々と話すことで初めて見えてくるものというのは確実にあります。
例えばネットでは三菱はお堅くて、三井は体育会系、などと書かれていることもありますが、僕は個人的にはそう感じませんでした。
さらに同じ三菱、三井のグループ内でも微妙に各会社に漂う雰囲気というのは違っています。これは自分で感じて確かめるしかありません。
同じことに対しても感じ方というのは人それぞれなので、自身の直感というものも是非大事にして下さい。
なぜ日系大手なのか
なぜ海外の大学を出て、日系の大手というドメスティックな選択肢を選ぶのか、と疑問に思われる方もいると思います。
まず外資ではなく日系にしたのは、日本の大手不動産デベロッパーは日系のみだったからです。なので外資はほとんど受けませんでした。
大手を選ぶ理由は、やはり大手でしか出来ない経験をしたいと考えたからです。街作りというのは圧倒的資金力と歴史を持った組織の中でしか出来ないことだし、成長したいなら周りに優秀な人々がいる環境に身を置かなければならないと考えたからです。
ベンチャーに行ったり、起業したり、NPOで働いたりするのは後からでも出来るが、中途で日系のトップの方の大手企業に入るのはかなり至難の技だとも考えました。
あとは現実的な話ですが、大手とその他では待遇の差が圧倒的です。ここは本当によく考えた方がいいと思います。さらに将来転職するにしても元〇〇の、という肩書きが付いてきます。
もちろん大手が安泰だという時代ではもうありません。
ただ、「楽しそう」「カッコ良さそう」という理由のみでベンチャー等に行くのはリスク以外の何者でもないと考えます。
とはいえ、海外大卒の生徒が日系の会社でミスマッチなく働いていけるか、というのは留学生の多くが持つ疑問だと思います。
僕の場合は様々な年次の内々定先の社員さんとお話しする中で、なんとなくですが自分でも上手くやっていける感じがしました。上の年次の方々、恐らく自分の上司になるような方とも違和感なくコミュニケーションをとることが出来たのも大きかったです。
他の会社では一次面接を担当して下さった比較的年が近い社員さんとは相性良く感じても、二次や三次でお会いした上の年次の方々と合わないなと感じることが多々ありました。
前章で実際に企業の人と話すのが大事だと書いたのは、このように僕自身が対面でコミュニケーションをとる大切さを強く感じたからです。
実は僕が就活を始めた当初の第一志望先は入社予定の会社ではなく、そのライバル会社でした。
理由は先輩に君はそのライバル会社っぽい雰囲気だねと言われたことと、自身もブラジリアン柔術をしていて体育会系っぽいのでカルチャーに合うのかなと思ったからです。我ながらかなり曖昧な理由ですが、周りにそもそも日本人の先輩がそんなにいなかったし、企業説明会等に参加する機会も無かったのでかなり情報不足でした。
そして内々定先の会社の方が選考が先だったので、同じ不動産デベロッパーだし受けておこうかな、という気持ちで臨みました。しかし実際に人事の方々と選考やディナーを通して話をするうちに、その会社、そこで働く人々に強く惹かれるようになりました。
言語化するのが難しいところではありますが、最終面接を受ける頃には「僕はきっとここで仕事をすることになるんだろうな」と感じました。どんなけ自信過剰やねん、と思われるかもしれませんが、自分の軸 / ミッションステイトメントを決めて嘘をつかずに就活していたら、こういう風に感じられる企業に出会えるはずです。
ちなみに、そのライバル会社の選考もボストンで受けたのですが年次の高い社員さんと相性が合わず二次面接で落ちました。実際、説明会でお会いした他の社員さんの話を聞いても、自分が彼らと仕事をしている様を想像しづらかったのを覚えています。
自分が合わないなと思った場合は、相手も同じように感じている場合がほとんどです。
こういう自分の直感、何となく肌で感じることは絶対大事にして覚えておいた方が良いです。最終的に内々定をもらっている会社の中から一社を選ばなければならない時などに必ず役立ちます。
話を戻して内々定先の会社を選んだもう一つの理由は、企業の文化もいい意味で日系大手らしくなくていいなと思ったからです。
オフィスは公園をコンセプトにした新しいものでグループアドレス制、副業も解禁、フレックスに加えて、リモートワークも可能。さらに仮眠室もあり、社食は朝ごはん無料、夜にはバーになりお酒が飲めるなどいわゆる僕らが思い描く日系のドメスティックな大手とは対極にあるように感じました。
さらに僕は出来るだけ早いうちに海外で仕事をしたいと思っていました。
それならば海外志向が高い学生が集まる商社などより、国内の事業に携わりたい生徒の割合がまだ多い不動産デベロッパーの方が競争率が低いはずだと予想を立てました。
最後の決め手は、やはり人でした。
僕は人事部の方々も入れた社員さん計6名と対面、またSkype等でお話しさせて頂きました。年次は様々でしたが、どの方もとても優秀で素敵な方々だと感じ、この人達と一緒にお仕事したいと思いました。
またメールの返信も他社と比べて、非常に迅速かつ丁寧でした。
以上のような理由で入社することに決めました。
留学生の皆さんにお伝えしたいこと。
海外から就活することは簡単ではありません。
国内と比べたら得られる情報量も少ないです。
しかしそれは逆に武器にもなり得ます。
なぜなら情報が少ないがゆえに素の自分で勝負が出来るからです。
国内生と同じように就活系ブログやサイトを見て、その会社を攻略しようとして、無難なことばかり言って自分を出し切れずに不本意な結果に終わる海外生は少なくないです。
国内生には国内生の、海外生には海外生の就活があります!
どっちの方が上とかいう低次元な話ではありません。
しかしせっかく苦労して海外留学しているのに国内生と同じような就活をしようとする必要はありません。むしろするべきではありません。企業側からしても、高額な費用をかけてわざわざ海外にまできて生徒を採用するのは国内では出会えない人材を採用する為です。
海外に正規留学している生徒は大抵良い意味で変態です。
その変態さを自分の持ち味にして、いかに自分がユニークで有用な人材であるかをアピールして下さい。
それで落ちる企業には元々縁が無かったというだけの話です。
嘘で固めた自分で内々定をゲットしても、働き出してから上手くいかないのは明白ですよね。
学校のこともこなしながら就活するのは大変ですが、しっかり自己分析、業界分析等を行って、悔いなく就活を終えられように全てのことをやりきって下さい!
Good luck!